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ベトナム巡礼旅行記(4)

巡礼5日目

 この日はホーチミン市の郊外に出かけたので、ホテルを出発する時刻がいつもより30分遅く、気分的にも余裕があったのでしょうか、バスの周りを取り巻く物売りの人たちから、買い物をする人たちもありました。「10枚千円」、「15枚千円ではどう?」、「だったら20枚千円!」と交渉に乗るから買ってくれという売り手たち。日本円での商売です。得をしたのでしょうか?

 バスが街中を抜けていくときに、道端においてあるプラスチックの椅子に座ってコーヒーを飲んでいる人を見ながら、ガイドさんが話してくれました。「朝食をとる人がたくさんいるので、コーヒーショップがあちこちにあります。でも、取調べが来ると、すぐに集めて持って逃げられるように軽いプラスチックの椅子がいいのです。朝食は1万ドンくらい、フランスパンなら5千ドン、昼食は1万から2万ドン。一ヶ月のお給料が150万ドン。(1万ドンは約80円だと聞きました。)外資系の会社に就職すれば、一ヶ月3万円から5万円の収入が得られるので、皆、よい会社に就職しようとしています。」と説明してくれました。

 大型トラックが市街地に入れる時間帯が制限されているそうで、案の定、国道の反対側車線はトラックの列になっていて、ピークを過ぎた時間帯ではあったのでしょうが、かなり混んでいました。

 バスの中で、ベトナム・A/S教育基金のFさんから、その活動についてお話を聞きました。
「1997年7月1日に設立されたこの基金は、どういう形でベトナムの子どもたちの支援ができるかを模索してきました。多くの方々の寄付で年間約500万円の活動資金を含む支援を受け、活動を続けています。要請を受けて車で移動しながら現地を訪問し、教育を受けられない子がたくさんいること、わずかな手伝いで、子らの明るい将来が見えてくることを実感しています。実際の活動としては、校舎の建設、教師の要請、遠くから学校にやってくる子どもたちのために給食(朝食)や寄宿舎の提供、極貧の家庭や障害を持った家庭に対し子牛を2頭産むまで親牛を貸し出すカウバンク、井戸の設置などがあります。すべて子どもたちの笑顔を糧にしながら、あることについては教区の司教様と共同作業をしています。皆さんにこの現状を知っていただきたいと願っております。」と、体調を崩されたままベトナムに来られた、というFさんの使命感に感動させられました。

 ブイ・チュ教会に到着して、ここでミサのつもりをしていたところ、連絡して確認をとっていたはずの主任司祭が不在でした。

 食事のあと、Fさんは、現状を見にきてほしいという現地の要請を受けて、神学生のHさんと一緒に、HIVチルドレン基金のKさんを伴って目的地に向かわれました。盛大なお別れをし、無事、お仕事の成果が上がるようお祈りしました。あとでわかったことですが、教会の主任司祭がいらっしゃらなかったのは、公安の取調べにあっていたためということでした。

 途中、お手洗い休憩と称して、フランシスコ会修道院に立ち寄らせていただき、何匹かの放し飼いされている犬たちの歓迎を受けたあと、修道院の中を案内していただきました。

 信徒のために教会はあっても、黙想する施設が足りないということで、この修道院を増築し、黙想するグループを受け入れておられるとのことでした。

 小聖堂にはベトナム風のマリア様とヨセフ様が両脇に置かれ、聖フランシスコのエピソードを題材にしたステンドグラスが周りにはめられていました。聖フランシスコが自然を愛したことに因んで、修道士さんたちの手入れが行き届いた、猿が飼えるほどの森のような庭がありました。この修道院の敷地内にある作業場では、十字架やマリア像、聖人たちのご像や壁掛けなどが作られていました。

 休憩が終わって最終目的地のチー・ホア教会に向かいました。バスの横を走るバイクの列を見ながら、ガイドさんが話してくれました。

「女性は既婚者か未婚者かは、すぐわかります。結婚するまでは、日に焼けたくないので、バンダナで顔を覆い、腕の付け根まである手袋をしてバイクに乗っています。結婚すれば、そんなことはどうでもよくなるのです。みんなヘルメットを被っていませんが、12月に法律で規制され、ヘルメットを被らなければなりません。今、町で売られているヘルメットの安いものは粗悪品で、ヘルメットの役を果たさないものです。中国から安いものがたくさん入っているようです。」と。

 また、「バイクには大人2人が乗ることは認められています。そこに子どもが乗っても問題はないので、家族で乗っている光景をよく目にします。ですから50tのバイクでは小さすぎるから、走っているのはだいたい100tのバイクです。」と。

 大通りにバスが留まりました。そこからは道が狭いため、教会のそばまでバスが近寄れず、荷台にベンチをしつらえた家畜を運ぶような小さな軽トラックに10〜12人ずつ乗り込んで、ピストン運転をしてもらって現地入りしました。ここには聖具を売っているお店があり、巡礼に参加できなかった方々のために、聖堂で祈るより熱心にお土産のご絵を選びました。

 シスターが経営するというレストランで、巡礼最後の夕食をとるということで、早目に行くと貸切のパーティー会場が設けられていました。

食事の前に、会場の片隅に輪になって座り、一人ひとり巡礼を振り返る時間をとりました。どの人もあふれそうになる涙をこらえながら、感激と感謝を述べ伝え、巡礼に参加できた幸せを分かち合いました。

食事はいくつかの修道会の志願者や神父様方、志願者に住居を提供するスポンサーとなる方、ベトナムHIV基金の方々などと、約80名が混じっていくつかのテーブルを囲みました。
お料理はさることながら、次々に披露されるシスターや志願者たちの踊りや合唱を楽しみながら、かろうじて通じる会話で交流しました。返礼には、準備していた『ベトナム巡礼聖歌集』の歌ではない、『ふるさと』を歌いました。

 巡礼中は何も気に留めていなかったのですが、台風の心配がある日本に向かって飛ぶということで、空港での混乱を避けるため、午後8時過ぎにはベトナムの皆様と別れを惜しみながら、再度「トラックタクシー」に乗り込みました。

 さすがに5日目の疲れはあったのでしょうが、充実した毎日を思い返し、満足感に輝いた顔を互いに自慢できたのではないかと思います。

成田行きの飛行機が欠航となったため、満席となった関空行きは台風の影響を感じさせることなく、絶妙な着地で無事巡礼団を帰国させました。それぞれに現実に戻った悔しさを押さえ、家路をたどりました。

 最後の収穫は、機内の朝食が終わって関西空港に到着前、くたびれた様子で目をつぶっている巡礼団の中に、一人、祈りの本を開けて、静かに朝の祈りを捧げている方を見つけたことでした。

(完)

文:A.H;H.F 写真:N.K; J.S; A.T; H.F.



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