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ベトナム巡礼旅行記(1)

巡礼1日目

 2007年9月1日午前11時、N教会とT教会の信徒31名は関西空港をベトナムに向けて出発しました。現地時間午後2時30分到着ということで、2時間の時差を加えると5時間半のフライトであったことになります。

ベトナム航空を利用したこともあって、飛行機に乗り込んだときからかろうじて読めても意味のわからない言葉に諦めを感じていましたが、渡されたメニューは日本語で書かれたページがあり、ミスプリントはあるものの、日本人観光客を想定した機内サービスに商魂を感じさせられるものがありました。

 ホーチミン空港に到着し、預けた荷物を待っている間に、出迎えの人だかりの中にT神父様を見つけることができました。たぶん皆安堵したことと思います。

T神父様の案内で国際線到着ロビーから、3日前にオープンしたばかりの国内線のターミナルに移動しました。まだ要領を得ない職員がT神父様の要求を了解し、私たちのために別のドアを開けてくれて、スムーズに手荷物の検査や手続きを済ませることができました。

時間待ちの間に、ツアーコンダクターのSさんから巡礼中の諸注意を受けたあと、巡礼参加者の紹介がありました。ここからベトナムHIVチルドレン基金のメンバーであるKさんが巡礼に合流されました。

Kさんはベトナムでの仕事の合間の参加ということで、仕事疲れが残っているようなご様子でした。フエ行きの飛行機に乗り込むまでの間、空港内のレストランで軽食をとる人たちもいましたが、皆、ベトナム風のメニューに戸惑いながらも、もの珍しさもあって、いろいろなものを注文していたようでした。

 フエ空港で、「T神父様と行くベトナム巡礼」と書かれた札を持った日本語を話すガイドさんが、大きなバスまで案内してくれました。

ホーチミンからの機内ではハムをはさんだパンが配られ、律儀に箱を空にした人もありました。

到着後、立ち寄ったレストランでの午後9時からの夕食は、拷問のようにずっと食べ続けている気がしたほど、量がありました。

 

巡礼2日目

 6時半起床8時出発で、バスはラ・ヴァンに向かいました。

 この日は日曜日で、通勤のラッシュアワーでもないのに、所狭しとバイクが行き交い、よくぞ事故がないものだと感心したものでした。

 バスガイドさんの説明では、9月2日は「建国記念日」で、いろいろなところで行われるイベントを見に出かけている人たちだそうです。確かにバスから見える大きな川では、ボートレースが行われているようでした。

 バイクの合間を縫いながら、日本の援助を受けて建てられたという大きな病院の横を通って、バスは雑踏を抜け出し、広々としたやせた砂地の中を通る国道1号線を北に約60km走ったところにある、ラ・ヴァンの教会に向かいました。

 ほとんどが仏教徒であるというフエの町には、130を超える寺院が点在しているそうです。人口約200万人のうちカトリックの信徒は約64,000人と、フエはカトリック教会としては比較的小さい教区だそうです。

13世紀にベトナムが手に入れたフエの町は中部ベトナムの中心地として13代の王朝が栄えました。1798年、この王朝のもとに禁教令が公布され、カトリック信者が迫害された時期がありました。信徒らは山の中に逃げ込み、ジャングルの中でマラリアなどの疫病に苦しみながらも、熱心にロザリオの祈りを唱えて信仰を貫きました。この信徒たちにマリア様が出現されたと言われており、210年間、そのことが代々伝えられてきました。この地がラ・ヴァンと名づけられたのは、そこに育つラ・ヴァンという薬草に由来するそうです。

 19世紀になって、カトリック教会がラ・ヴァンを聖地として認め、1900年代にはレンガ造りの教会がこの地に建てられました。この教会は戦争中の爆撃で破壊され、今は鐘楼だけが残っている状態ですが、マリア様が出現されたと言われるその場所は不思議なことに無傷であったと言われています。

その記念の場所にマリア像が据えられ、その前には修練女の方々でしょうか、30人余りのグループがひざまずいて熱心に祈りをささげていらっしゃいました。

 私たちはそのマリア像の横にある野外の祭壇の前に並んだベンチに陣取り、日本語のミサに与ることになりました。マリア像の前の祈りのグループと私たちは互いに譲ることなく、隣同士の場所でそれぞれが一方では祈り、他方ではミサを捧げたという状況でした。

すでに多くのベトナム人の信徒が辺りの席を埋めて、それぞれに祈っておられました。ミサの前にT神父様がなさったベトナム語での説明に至極納得した様子で、皆、一つになってミサに与りました。福音は最初にベトナム語、続いて日本語で伝えられ、『主の祈り』はベトナム語で歌われて、ミサは進行しました。

 実は、最初に「ミサは座ったままで与りましょう。」という説明を受けていましたので、信徒でない方々を交えて与るミサのようなつもりでいました。でも、ベトナムの方々がみな一斉に立ち上がられ、私たちが座ったままでいることがみっともないようなことになってしまったため、遠慮することなく、立つときは立ち、座るときは座るという結果になりました。

 ご聖体拝領をなさらないベトナムの方々もありましたが、その方たちはすでにミサに与ってこられたということで、ミサ後、マリア様の近くで黙想されていたところに私たちが押しかけたのだということが分かりました。

ベトナムの信徒の方々の深い信仰に感動し、その方たちと同じミサに与ったという喜びが込み上げました。

 もうひとつ感心したことは、現地でミサの侍者をしてくれた少年の気配りでした。

時折吹く強い風が祭壇の上をさらうときには洗濯ばさみを差し出し、きつい日差しが神父様の上に居座ったときには、ベンチにいる自分の母親がさしている傘をとって神父様にかざし、あるときは先唱の方が座る椅子を取りに行って、心地よい補佐をしてくれました。

 ラ・ヴァンで迫害にあった信徒たちが熱心にロザリオを唱えていたからでしょうか、敷地内の建物の中にある小さな売店には腕にはめる一連のロザリオが幾種類も並んでいました。同じショーケースにはラ・ヴァンの水がペットボトルに詰めて並べてあり、伺うと、「売り物ではないけれど、いくらかの献金をお願いします。」ということでした。乾燥させたラ・ヴァンの葉とともに、湧き水もこの地ならではのお土産になるようでした。

 ミサ後、教会の神父様からホーチミンへの輸送を頼まれ、乾燥したラ・ヴァンの葉を巡礼団の男性がそれぞれ両手に大きな袋を受け取り、バスに積み込みました。それを待っている間、バスを取り巻くように物乞いの子どもやお年寄りが群がっていました。それぞれに窮状を訴えながら、いくらかの施しを乞うているようでしたが、ちゃっかりと2度手に入れた子どももあり、これも一つの仕事であり、多く得ることができる者は手腕を誇るのであろうとバス中から眺めていました。

 バスが出発してフエに戻る途中、暗く垂れ下がった空に稲妻を何度も見るうちに、毎日やってくるというスコールに遭いました。さっきまであんなにかんかん照りだったのにどうしたの、と思うほど大変な雨でした。昼食をとっている間も、屋根を突き破らんかの雨音がバックグラウンドミュージックとなりましたが、食事が終わってバスに乗り込むときは、またもとの蒸し暑いお天気になっていました。

 昼食後、カイ・ディン帝廟、トゥドゥック帝廟、ミンマン帝廟などを見学しました。13代続いた王朝が如何にその民を自分の虚栄のために利用したのか窺うことができるような気がしました。王朝の繁栄と平行してキリスト教徒が迫害された歴史も刻まれているそうです。

 ホテルへの帰り道、刺繍博物館に立ち寄り、芸術作品を見たあと、道を渡ってむかい側にあるお店で何やら買い物をする人もありました。ホーチミンよりフエのほうが安いということで、本当に短い時間でしたが、ベトナム人の正装であるアオザイを急いでオーダーした人もありました。たった一晩で仕立ててくれるという早業で、次の日にフエを飛び立つまでにレストランで受け取るというものでした。

 その夜はフエ名物の宮廷料理をいただきました。宮廷料理をいただく前に、巡礼団はフエの14代王朝だと言いながら、リン王朝の文官や武官になり、庶民になった人たちも加えて、全員が貸衣装によるつかの間の宮廷生活気分を楽しみました。

お料理は人参や大根、きゅうりなどの野菜を使って鳳凰や孔雀を形作り、見事に飾られていました。青ねぎやにんにくを使って花が作られているのにも感心しました。羽になっている人参を取って食べようとすると、ウエイターが「だめだめ、食べたらだめ。それは飾りだから。」と慌てて止めにきました。もう一度使うのかな、今までに何度使ったのだろうなどと考えながらその飾りをしげしげと眺めました。

 時間の関係上、観光地をパスすることはありましたが、無事、巡礼を終了することができました。食べきれないお料理を包んでもらって持ち帰る幾人かの殿方がありましたが、どうやら、声を掛け合って、ホテルでの二次会が開催されたようでした。これが幸いしたのか、夜中にホテルの1室で不意の室内スコールにあった巡礼団の仲間がいましたが、この部屋に助けを求めに行き、直ちに対応してもらうことができたとか。リン王朝は庶民にまで行き届いた統治ができているのかもしれません。(続く)

文:A.H;H.F 写真:N.K; J.S; A.T; H.F.



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